電車と僕。 (04/2/1 テキストマニアV一回戦)


 

僕は大学まで自宅から通学しています。

 

そして、

家から大学まで120kmあります。

 

120km。とにかく遠いのです。

例えて言えば、ヒトの腸の2万倍ほどの長さ。

さらにいうなら「6フィートガム」6万7千枚分。

 

この話を友人にすると、まず

「やっぱ新幹線使ってるんでしょ?」といわれますが、

「いや、うち貧乏だから無理。」と返します。

そして流れる気まずい空気。

 

なめんな。

貧乏人は新幹線なんか乗れないっての。

※新幹線定期一ヶ月約8万円。普通通学定期一ヶ月約3万円。

僕が金持ってるように見えんのか。

「ユニクロ」と「しまむら」以外の服着てねーだろ。

120円の電車代ケチって雰囲気悪くしたことあるだろ。

 

友人たちからは「狂気の沙汰」だの「あの子、頭が弱いから」だの言われますが、

いろいろ言われても「まあね」で流します。

 

  「引っ越せよ。つーかアホじゃん。」

  「まあね。」

 

 

で、結果として片道3時間近く電車に乗っているわけですが、

それだけ電車にのっているといろいろなことが起こるわけです。

 

 

ある日、電車でロシア語を読んでいると、

途中の駅で、昼間だというのに酔っ払ったおっさんが乗ってきました。

興奮したマントヒヒくらい顔が真っ赤なおっさんが。

いや、昼間から酒飲みすぎです。

 

こういうときに限って、空いてる座席は僕の隣だけ。

おっさんは僕の隣に座りました。

「くそーついてない。」

しかし僕は自分に運がないのはわかってます。

かつて修学旅行でのおみくじで、

東大寺・清水寺と立て続けに「凶」出して死にたくなったりもしましたし。

旅先なのに「旅立ちわろし」とか書いてあったし。

 

それはさておき、

おっさんが隣に座っただけで終わればよかったのですが、

おっさんは僕の読んでいたロシア語のプリントをみると、

おもむろに話し掛けてきちゃったんですよ。

「おっそれはロシア語だろ?スパシーバだろ、スパシーバ。

スパシーバ:Спасибо ありがとうの意

 

な、何いってやがる、意味わかんねーよ。と思いつつも、

あまりの出来事に動揺する僕の口から出たのは

「あ、あーそうですロシア語です。スパシーバです。スパシーバ。

 

し、しまった!無理やりにでも寝たふりしとくべきだったッ!

と思っときはすでに手遅れ。

 

「いやー、おれは世界中旅してたからねー、一目見てわかったよ。

 ロシア語やってるなって。スパシーバって。」

「ロシアだけじゃなくて、韓国、南米の方にもいったなー。」

「旅する目的ってのはな、ここだけの話、

 ネーちゃんだろ、ネーちゃん。ガハハハ。

 

おっさん、しゃべりだしたら止まらないわけですよ。

まさに畳み掛けるような攻撃。

ドイツ電撃戦を思わせる鮮やかな奇襲・猛攻。

向かい側の席の若者はこっちみて笑ってるわけですよ。

クソッ座った座席が違うだけで随分と不平等だ。

 

さらにおっさん。

「じつはな、おれはロシア人と付き合ってるんだよ。

 旅先で出会って、スパシーバってな。ガハハハ。」

 

いや、わけわかんないって。

 

「にーちゃん、あんたには特別に見せてやるよ、

 おれの彼女の写真。ガハハハ。」

 

そして写真をみせてもらいました。

あー確かにおっさん、ロシアの女の人と楽しげに写ってるなー、

やっぱ旅すると出会いがあr

っていうか、写真の場所日本のロシアンパブじゃね?

 

 

「どうだ?きれいだろ?な?」

 

いや、おっさん自分で旅したって言ったじゃないですか。

思いっきり嘘じゃないですか。

嘘の自慢話を延々聞かされて黙っているほど僕が甘いとお思いか。

ここはひとつビシッと言っておこう

 

 

 

「いやー、キレイっすね―、うらやましーっすよ。ははは」

 

 

結局ダメなのは僕じゃねーか。

 

 


 

戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送